第3回 幼児教育における知“脳”教育(後編)|幼児教育・幼児教材の「まいとプロジェクト」

第3回 幼児教育における知“脳”教育(後編)

はじめに  遺伝か環境か? 知性に影響を与える要因と「脳内ネットワーク」

(前回は、脳内ネットワークの出来の良さが知能に影響すると言うことをお話ししました。さて、今回のこのコーナーでは、人類の本質がもたらした高度な脳内ネットワーク形成についてお話します。)

前回「幼児教育における知“脳”教育」(前編)を見る

さて、このニューロンの大量死とシナプスの急激な形成とその後の消滅は、一体どういう事なのだろうか?

人類が大きな脳を持つことが出来るように、猿並みの脳で生まれてその後に飛躍的に発達するシステムを選択したならば、その様な高等動物の人類が、どの様な環境にも適応して生きていけるように、この仕組みを選択したのかもしれません。
生まれてくる環境はどういう環境なのか? どういった脳内ネットワークがその環境にとって相応しいのか分からない。つまり、農耕型なのか狩猟型なのか、森林地帯なのかサバンナなのか、寒冷地か熱帯雨林か、等々、色々な環境を生き抜けられるようにニューロンを多量に作っておき、無事生まれた後には急速にシナプスを形成させ、その後無秩序で膨大なシナプスを刈り込むことで、その環境に合う脳内回路が出来上がっていく。。。。。

これは、人類の本質=好奇心とチャレンジ魂に因るところかもしれません。

一般に、生き物は下等動物ほど生命力が強く環境を選ばない。にも関わらず、人類ほど地球上のどこにでも生息している高等動物はいません。アラブの灼熱の砂漠からアマゾンの熱帯雨林や極寒のアラスカまでいたる所にいる。

人類の祖先の猿は、500万年前にアフリカの安全な森林を捨て、敢えて危険で未知なるサバンナの大地へと進出していきました。それは人類の持つ好奇心とチャレンジ魂に他なりません。
その結果、人類はいろいろな恩恵を受けることになりました。
二足歩行はもとより、狩りをしなくては生きていけないので武器は使用するし、コミュニケーションがなくてはならないので言語能力も発達する、なにより周りは猛獣だらけの危険地帯なので頭が良くなくては生きていけない、故に、大脳は爆発的に発達することになる。
このため、森林に残った猿たちと、我々祖先の好奇心とチャレンジ魂を持つ猿とは違う進化の発達をとげることになりました。 このアフリカでのサバンナ進出こそが、猿と我々人類との分岐点となったと言っても過言ではないでしょう。

この様に、我々人類は好奇心とチャレンジ魂を持つゆえ、環境の定まった一点に留まることなく、地球上のあらゆるところに進出していった。なかには絶滅してしまった種もいる。
しかし、ある種の系列のみ生き残り我々の直接の祖先となり、人類は進化して来ました。
どの様な環境で生きるか分からない、ゆえに、その子ども達もあらゆる環境に生まれる可能性を持ち、どのような環境でも生き抜かなければならない。
つまり、どの様な環境に生まれようと、それに適応できるように脳内神経ネットワークを作り替えることができる能力を、その祖先の人類が戦略的に選択したと言えます。

さて、話しを元に戻しますが、幼児期において、このニューロンの大量死とシナプスの急激な形成とその後の消滅の意味するところは何なのだろうか?
とくに重要なのは、「シナプスの形成と刈り込み」です。
一旦形成されたシナプスは無秩序で膨大な数にのぼるが、それが刈り込まれることによって整備された脳内ネットワークになり、さらに、うまく結合し強化されたものはその後も消失することなく生き残る。余分なものを削って必要なもの=必要な知性を丈夫に育てるためと言えます。(適切な幼児教育プログラムは、シナプス結合を強めていくための知育、遊びが優れている。)
これは、5〜6歳にまでの時に顕著であり、生きていくために必要なものほど、つまり、低次な知性における臨界期とも一致する。何万年前もの昔であれば、最低限生きていくために必要な視覚とか嗅覚、運動神経と言ったものに関連する知性だけでも充分だろうが、いま、私達の生きる現代においての必要な「知性」とは何なのでしょう?
もはや一昔前のように「IQ(既出)」のみとか、「一部の知性(既出)」のみを求める親はあまりいないはずだ。まんべんなく知性を伸ばす。現代社会では、とくにより高度な知性が求められており、人間としての「自我」も重要となってくる。。。。。
そんな可愛い我が子の将来に備えて、その子の才能(芽)を開花させるための環境作り(土壌作り)、それこそが幼児期における知「能」教育の意義に他なりません。

最後に、冒頭の言葉を繰り返したい。
「人の知性は遺伝と環境によって決まる」

環境=劇的な脳内変化を遂げる幼児期に養育者が与える環境=こそが、可愛い我が子の将来を左右する才能の開花のキッカケになるのだと。。。。。

(今回のテーマ、「遺伝か?環境か?」、「脳内ネットワーク」について、この解説のコーナーは以上です。長い進化の歴史を通して獲得した、人類の脳内ネットワーク形成の仕組みを理解していただけましたか?)
さて、前回同様に引き続き、るりる〜先生と吉木先生とで「幼児教育における知“脳”教育」について対談を進めていただきたいと思います。

幼児教育における知「脳」教育(後編)

宮本みきお

ところで、先ほど吉木先生にはカードを使った遊びを教えていただきましたが、右脳教育と言うとアメリカは進んでますが、カード遊びの一種でドッツカードと言うのはどんなものでしょう?

吉木稔朗先生

ドッツカードは、アメリカのグレン・ドーマン博士が、知的障害者の教育のために作成したものですが、これが幼児教育に応用すると、幼児たちは、恐るべき能力を発揮したのです。

ドッツカードは30cm四方の紙に点(ドッツ)を貼ります。これも文房具店で赤や黒い●のシールを売っていますので、それを活用すれば充分です。
まず1枚目のカードに1個貼ります。2枚目のカードには2個、3枚目のカードには3個と、100枚のカードを作りましょう。出来上がったら、子供にそのカードを数秒ずつ見せていきます。
そしてそのカードのドッツ( ● )の数をお母さんが言います。

私たちが、カードを数秒見せられただけだと、分かる数はせいぜい5、6個です。7個と8個の違いを数秒では言えません。しかし、子供はトレーニングすると、99個と100個の違いがすぐわかります。さらに訓練していくと、85個から61個を引いて、残りの個数を瞬間的に言えるようになります。
それは、ドッツを数えているのではなく、映像として捉えているからです。これはまさに右脳の能力ということです

宮本みきお

これは、まさに右脳能力のみ突出した例ですが、スゴイ能力ですね。
さて、るりる〜先生は、幼児「脳」教育の現場としては、どのように右脳教育をしてますか?

佐藤るり子先生

右脳の持つ各種要素を色々な方法でまんべんなく伸ばすように指導します。
具体的な右脳を使った方法として、教室での指導の一例をあげてみます・・・・・

数量
0歳〜6歳と、どの年齢でも左右の数の多少の判断をしていきます。発達年齢によって、提示する数量は異なります。基本的には、左右のお皿に入ったおはじき等をみて、どちらが多く・あるいは少なく入っているかを当てるゲームです。この時には、数える方法ではなく、パッと直感的に見て多い・少ないと感覚的に捉える事が大切です。4歳位からカードを使っての多少の判断も入れていきます。

空間認識
積み木を高く積み上げたり、奥行きのある物を作る事を目的に積み木遊びをしていきます。4歳位から、隠れた積み木がある事の着眼点も増やしていきます。6歳以降は、部屋の地図を見て、宝物探しをしたり、町の地図を見て探検するなど。

図形認識
空き箱制作を沢山していきます。□を立体にしたり、立体の展開図を意識していきます。また、平仮名や漢字を形で捉え探すゲームをします。

音楽
音を聞いて、綺麗な音や不快な音がある事、速い・遅いというイメージのするリズムを感じる事、音が聞こえる状態と聞こえない状態、高い音と低い音のイメージの違いなどを、身体を動かしながら体験していきます。

絵画
描く事の楽しさ、色の綺麗さ、色が混ざって変化する楽しさなどを様々な道具を使って経験していきます。

宮本みきお

幼児教育では、右脳と左脳のバランスがとれた感覚教育が重要だとのことですが、左脳教育としては、どのように指導してますか?

佐藤るり子先生

左脳を使って考えるときも、右脳の感覚的な感情を大切にした授業展開をしています。
具体的な左脳を使った方法として、教室での指導の一例をあげてみますね・・・・・

数量
数える(たくさんありそうだね。数えてみよう。)、並べる(きれいだね、ならんでるね、気持ちがいいね。)、位置を理解する(くっついてるね、はなれてるね。)、等。嵩(カサ)の理解。回転の理解。感覚的な理解から、論理的な理解力に繋げていきます。

言語
感覚的な物を言語化します。
気持ちを表す言葉を使うように先生が意識をします。(嬉しい・楽しい・怖い・苦しい・気持ち良い・気持ち悪い・ほっとする・ドキドキする・わくわくする等)
触った感覚や匂いを意識した言葉を意識します。(ゴツゴツ・ザラザラ・ツルツル・さらさら・ベタベタ・チクチク・すべすべ等)
音を言葉で表現する方法を意識します。(ドンドン・コンコン・バタン・ジャー・バシャ・チャポン・ガー・ガタンガタン・ピーポーピーポー等)
様子を言葉で表現する方法を意識します。(ザブン・チョロチョロ・ひらひら・ぱらぱら・ザーザー・びしょびしょ・ぴかぴか・ぐるぐる等)
更に、文章で話すお話作りや時制の一致なども理解していきます。

分類
物の名前を理解した後は、物には分類方法がある事を理解します。果物の仲間や動物の仲間、色の仲間など子ども達に興味のある事柄から始め、6歳くらいでは、果物でも木になるものや土の中で育つもの・ツルになるもの、海にいる動物や地上に生息する動物・冬眠する動物、赤ちゃんを産むものと卵から生まれるものなど、様々な分類方法を知っていきます。

分析
ゴムはどうして伸びるのか、磁石はどうしてくっつくのか、物にはどうして重さがあるのか、どうして浮いたり沈んだりするのか等、物を分析して考える方法を習得していきます。

まだまだ、右脳・左脳の刺激はたくさんありますが、どの分野も子どもの興味と関心が無ければ定着しません。幼児期は、より多くの事柄を定着させるための環境作りがより大切であるという事です。

宮本みきお

身近にできる右脳教育、左脳教育によって家庭でもバランス良く脳を鍛えることができますね。こんな幼児期の教育の積み重ねが、今日の我々、お母さんやお父さん、つまり大人へと繋がっていくわけですね。

宮本みきお

その通りです。実際、身近にそんなふうに鍛えられた右脳を私たちは使っています。

大人である私たちは右脳を使って、映像として文字を捉えています。たとえば高速道路で、出口の案内などが書かれていますが、私たちは高速で走りながら瞬時に何が書いてあるかわかります。しかし、一字一字読んでいるわけではありません。瞬間的に捉え、次の出口で降りなくては、などと思うのです。
これがなれないアメリカの高速道路を走った場合どうでしょう。英文で出口の案内があるのですが、一字一字読んでいるうちに出口を過ぎてしまった、ということを私は何度か経験しました。映像で捉えることができないのです。

本や名簿でも、日本語であれば、自分が目指している事柄や名前を比較的簡単に見つけることができます。ところが英文であれば、ひとつずつ見ていくので大変な時間がかかります。
映像で見た文字は、左脳によって判断されていきます。ですから、私たちも日常的に右脳と左脳を使いこなしているわけです。
右脳をせっかくうまく開発できても、単に映像として右脳に焼き付ける能力がスゴイと言っただけでは、宝の持ち腐れです。言語、論理、その他色々な要素をつかさどる左脳と一緒にうまく働くことによって、子供の能力は大きく育っていくのです。

宮本みきお

そうですね。右脳と左脳、IQとEQといった知性は、幼児期とくに臨界期の時に大きな影響を受けます。その時期に適切な幼児教育やそう言った環境作りがとても大切なことになるわけですね。さて、今回は、とくに「右脳」「左脳」と言う観点から対談をしていただきましたが、他に何か大切なことがありますか?

佐藤るり子先生

最後に、感情はとても大切であるという事をお話しさせて頂きます。

子ども達を観察していると、生き物に対しての感情の持ち方の違いを強く感じます。虫を飼っている子どもも沢山います。ペットを飼っている子ども達も増えてきています。
「心」「思いやり」「自分よりも弱い物に対しての接し方」を理解する、とても良い環境だと感じます。
子ども達の生き物に対しての接し方や扱い方を観察していると、生まれてから6歳くらいまでの育児教育の中で、「心」を育ててきているか否かを感じ取る事ができます。

たとえ、初めて触れるペットであっても、優しく思いやりを持って接することの出来る子どももいれば、残念ながら動物の前で脅かしたり怖がらせたりする子どももいるのはどうしてだろう?と考えさせられます。

飼っていても、飼っていなくても「心」は育てられます。それは、ご両親のお子さんに接する方法、そして身の回りの生き物(花や虫やペットなど)に対しての接し方や触れ方から子どもは学んでいくのではないかと思います。そう言った感情が、友だちとの係わりの中でも必要になってくるからです。

幼児期は、様々な知識を吸収すると同時に、人間の本質である「心」を育てる大切な時期であるからこそ、この時期の臨界期を意識して過ごして頂きたいと思います。

宮本みきお

どうもありがとうございました。幼児教育における知「脳」教育の大切さ、また、家庭での有効な遊びがとても重要だということがよく分かりました。右脳と左脳という視点からの知「脳」教育や感覚教育といった今回の対談は、大変興味深いものであり、意義のあるものだと思います。次回もよろしくお願いします。

次回は、子どもの才能をのばす「やる気」に関して対談をしていただく予定です。

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対談者プロフィール

吉木稔朗先生

吉木稔朗先生

神奈川大学法学部法律学科卒。早期教育の友人の死を契機に研究を引き継ぎ、現在、ヨシキ幼児教育研究所主催。主たる著書に「IQ200天才児は母親しだい!」「母親だからできる驚異の天才教育」「天才児を育てた24人の母親」などがある。

佐藤るり子先生

佐藤るり子先生

幼児教育学部卒。幼児教育学部専攻科修了。
首都圏の私立幼稚園教諭を経て、大手民間の幼児教育事業部において講師及び教室長を担当。首都圏エリアの運営及び講師育成並びに教育プログラム開発等を手掛ける。現在、幼児才能開発プロジェクト「まいと」専任講師。

宮本みきお

宮本みきお

立教大学経済学部経営学科卒。経営コンサルタント。大手民間の人材バンク及び人材開発の企業を経て、現在、コンサルティングファームを経営。

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